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世界的にむし歯治療の流れはMI(Minimal Intervention=最小限の侵襲)という考え方にシフトしています。
MIとは簡単に言うと、不必要に歯を削り過ぎない、安易に削る治療をしない、ということです。
当たり前のことを言っているようですが、科学、技術、材料、器材の進歩などがなければ実現がなかなか難しいことでもあります。
米川歯科医院でもMIの考え方に沿った治療を実現すべく、ダイアグノデントペンの導入や接着治療、ドックスベストセメント治療を行っております。
MI治療を行う上で第一に大切なのは診断です。
その歯が本当にむし歯なのか?むし歯の範囲は?深さは?とても単純なことですが、これを肉眼(視診)やX線だけで行うと限界がありました。死角にある小さなむし歯ほど見付けにくく、その大きさを把握するのは言うほど簡単ではありません。
そこで重宝するのがレーザーを使った虫歯診断機です。
2012年1月に日本テレビ系の人気番組「世界一受けたい授業」で紹介されています。
番組で最新機器と紹介していた機種は実は1つ前の型で、米川歯科医院ではそれを更にバージョンアップしたダイアグノデントペンを導入しています。
ダイアグノデントペンはドイツ・カボ社の製品で、レーザー光線を歯に当てて反射する蛍光を測定することでむし歯を見分け、同時にその進行度合いをデジタル数値化して表示してくれる優れモノです。
この数値から健全歯・エナメル質限定むし歯・象牙質に達するむし歯を見分けることができ、エナメル質限定のむし歯という結果の際は即むし歯治療という診断ではなく、歯を削らずにフッ素塗布やPMTCなど予防処置で再石灰化するかどうか経過観察しつつ予防を重視するといった診断が可能です。
もちろんこのような診断は肉眼やX線だけでは成し得ませんでしたが、ダイアグノデントペンがあることではじめて実現するより正確で科学的なMI治療と言えます。
正確な診断のもとに治療が必要ない歯となれば問題ありませんが、運悪くむし歯の治療が必要となった場合、範囲や深さが正確に診断できても治療の際に健全な歯を不必要に削ってしまっては元も子もありません。
一昔前までは比較的小さいむし歯でも奥歯であれば型をとって金属で修復していました。この方法ですと、型を取りやすくする、金属の厚みを十分確保できるようにする、金属が取れないようにする、などを考えながらむし歯でない部分をかなり犠牲にしていました。
しかしながら近年は、材料と歯との接着力の向上が材料の飛躍的な進歩により安定してきましたので、奥歯でも比較的小さい範囲であれば十分に耐久性が増し、MI治療に大きく貢献しています。特に日本の接着技術は素晴らしく世界のトップレベルであることは間違いありません。
一見するとむし歯でないような歯ですが、ダイアグノデントペンにより歯と歯の間にむし歯が隠れていることが発見されました。
実際に削り始めると確かにむし歯があります。
むし歯を取りきるとこの程度の大きさです。
コンポジットレジンという強化型プラスチックを用いた接着治療で治すとこのようになり、歯への不必要なダメージが最小限に抑えられます。
もしこれを金属で治したとするとこのような大きさになるでしょう。MI治療の大切さ、重要性がお分かり頂けると思います。
なお、コンポジットレジンの接着治療は保険適応が可能です。
そして接着治療の利点は、健康な歯をほとんど犠牲にすることなく治療できることだけでなく、歯の色に近い材料で自然に見える、小さいむし歯ならその日1日で治療が終わる、なども挙げられます。
しかしながらケースによっては金属に比べ耐久性に劣る、取れる・欠ける・すり減る、経年的に変色が見られる、などが起こることも否めませんので、歯の状況により使い分ける必要があります。
上記にお話しした通り、コンポジットレジンは飛躍的な進歩を遂げ接着力も向上、歯の色に近く自然ですので、むし歯でない個所に審美性を重視して健康な歯にほぼダメージなく応用することも可能です。
上の歯の真ん中がいわゆる「すきっ歯」になっており、むし歯ではありませんが日常生活では比較的目立つ状態です。
健康な歯のダメージもほぼない状態でコンポジットレジンを接着させました。
色も自然ですし下の歯との噛み合わせや真ん中のズレもなく審美性が向上しました。
ただコンポジットレジンはプラスチック系ですので、経年的に変色することが予想されるのと、強い衝撃で欠ける・取れることもあり得ます。
ですからこのような「すきっ歯」の場合は、矯正治療も視野に入れて治療計画を立てることが望ましいと思います。
→ クリアアライナーでの治療例 20歳代 動的治療期間5ヶ月
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MI治療の大切さは誰もが認めるところですが、実際に小さなむし歯の状態で発見されることばかりではありません。痛みがないのに大きくむし歯が進んでいた、むし歯だと気付いていたけど忙しくて治療に来られなかった、など様々な理由で通院した時には既にむし歯が大きく、歯の神経に迫っているということもあり得ます。
しかしながらそんな時にもMI治療の考え方は捨ててはいけません。歯の神経をいかに残すかが重要になってきます。
そもそも歯の神経は歯の寿命に大きく関係していることが昔から研究結果として知られています。例えば、実験的には歯の神経がない歯はある歯に比べて硬さが10%脆くなる、や、統計的には神経のない歯はある歯より8倍抜歯するリスクが高まる、などといったデータがあります。つまりたとえ大きなむし歯になってしまっていても、より神経を抜かない治療を選択することが抜歯することを予防する、すなわちMI治療と言えるのです。
とは言うものの、大きなむし歯になればなるほど神経を抜く確率は比例的に大きくなるのは事実です。そこでお勧めする最新保存療法がアメリカ発のドックスベストセメントという最新治療法です。
通常、むし歯の治療はむし歯菌に感染した歯を全て切削し、樹脂や金属などの代替物で修復することが大原則です。取り残しはむし歯の再発につながるからです。しかし、ドックスベストセメントは感染した歯を全て切削する前に詰めることでむし歯菌を死滅させ、歯を再石灰化することのできる成分を含んだ夢のようなセメントなのです。
2011年3月にTBS系の番組「これが世界のスーパードクター14」でも特集で紹介しています。
出演していた小峰先生に直接ご教授を頂いて、米川歯科医院でも導入しております。
神経に迫る大きなむし歯の治療で従来法とドックスベストセメントの違いを図で見てみましょう。
従来法
むし歯は全て安全域を含めて削ります。
樹脂や金属で修復して治します。
神経の直前まで刺激することや、既にむし歯菌が神経に侵入していたりすることで数か月から数年以内に神経に炎症が起こり痛みが出る確率が高いです。
神経を抜く治療に移行せざるを得なくなります。
ドックスベストセメント法
浅い部分のむし歯だけを削り、深い部分のむし歯は敢えて残します。
ドックスベストセメントを詰める。
ドックスベストセメントの殺菌成分が残ったむし歯菌を1年ほどかけて殺菌し、むし歯部分が再石灰化し硬くなります。
殺菌を確認しつつ表層の必要部分だけ最終修復をします。
こうすることで最終修復物と歯の神経との間に十分健康な歯の厚みが残り、従来法で治療するよりも歯の神経を安定させることが高確率で可能になります。
●利点
●欠点
いいこと尽くめのようですがドックスベストセメントも万能ではなく、治療する歯の状態により成功率が変わります。目安は以下の通りです。
実際の治療例です。
奥歯の金属の脇から歯が欠けてむし歯が進行していますが冷たいものが凍みるだけの症状です。
X線写真で見ると白く映った金属の下にむし歯が黒く見え、歯の内部の神経に迫る大きさであることがわかります。
金属を外すと内部でむし歯が広範囲に見られます。
浅い部分のむし歯だけを麻酔なしで取りました。治療中の痛みはありませんでした。
ドックスベストセメントを詰め、このまま1年ほど待つだけです。
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